改正貸金業法
~ その2 総量規制について
「改正貸金業法」が、今年6月までに完全施行されます。前号でお伝えした通り様々な改正が行われますが、中でも”年収の3分の1を超える借入はできなくなる”いわゆる「総量規制」は、金利の引下と並び目玉となる改正点です。現在債務を負っている方も、これから借入を検討せざるをえない方も知っておかなければならない重要な論点となるため、本号ではその「総量規制」を解説させていただきます。
1 総量規制とは?(原則)
総量規制とは個人の借入総額が、原則、年収等の3分の1までに制限される仕組みを言います。
(ただし一部除外または例外となる借入れもあります。)
貸付けの契約には「個人向け貸付け」「個人向け保証」「法人向け貸付け」「法人向け保証」の4種類があります。
その中で、総量規制の対象となるのは、「個人向け貸付け」のみであって、法人向けの貸付けと保証、また個人向けであっても個人向け保証については総量規制の対象にはなりません。
総量規制の対象となる「個人向け貸付け」とは、個人がお金を借り入れる行為のことです。
但し、個人が事業用資金として借入れる場合は、原則として総量規制の対象とはなりません。
2 総量規制の例外と除外
総量規制には、「除外」または「例外」となる貸付けがあります。
・ 不動産購入のための貸付け(そのためのつなぎ融資を含む)
・ 自動車購入時の自動車担保貸付け
・ 高額医療費の貸付け
・ 金融商品取引業者が行う500万円超の貸付け
・ 手形(融資手形を除く)の割引
・ 貸金業者を債権者とする金銭貸借契約の媒介
例外の貸付けは、除外とは違います。貸付けの残高としては算入するものの、例外的に年収の3分の1を超えている場合でも、その部分について返済の能力があるかを判断したうえで、貸付けができるものです。
例えば年収が300万円ある人が、100万円を借入れている場合、これですでに3分の1となりますが、緊急に医療費としてあと30万円借りたいというような申し出があったときに、これについては例外規定という形で貸付けができる場合があります。これが例外の貸付けにあたります。
・ 有価証券担保貸付け
・ 不動産担保貸付け
・ 売却予定不動産の売却代金により返済できる貸付け
・ 顧客に一方的有利となる借換え
・ 緊急の医療費(高額医療費を除く)の貸付け
・ 配偶者と併せた収入の3分の1以下の貸付け
・ 個人事業主に対する貸付け
3 総量規制が施行されるとどうなるの?
例えば年収300万円の人は、年収の1/3の100万円までしか借り入れができなくなります。仮に、この人に総量規制施行前に3社から合計150万円の借金があったとします。総量規制が施行されると50万円分が総量規制の枠からオーバーするため、このことが判明した時点で金融会社はこれ以上の貸し出しを行えなくなります。
返済のために借入を繰り返している、いわゆる「自転車操業」になっている場合、新たな借入ができず、結果返済不能となってしまうおそれもあります。
貸金業者は自社の貸出額が50万円超か、他社との合計で100万円超の利用者から源泉徴収票等の年収証明を取得しなければならないことになっています。また、収入のない専業主婦等が借入をする場合、収入のある夫の同意書が必要になるとみられています。これにより、家族に内緒で借入をしていた場合、総量規制の施行により、家庭内でトラブルになるおそれもあります。
借入をされている方、総量規制によって返済不能に陥る前に、一度ご自身の債務を再点検してみてください?
借入金額を把握していない、法律は難しくてよく分からない、自分が該当しているかどうか知りたい・・・
こういった方は専門家へのご相談をお勧めいたします。
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