ながしま事務所通信


~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~

第61号 平成22年7月 発行

コラム画像 コラム:当職が感じたことを徒然なるままに綴ります。


マーケティングの必要性

 

 ~ 話題の「もしドラ」を読みました

 先日、書店で話題のビジネス書「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(以下「もしドラ」)を衝動買いしました。100万部近く売れている本なので、もう読まれた方もいるかもしれませんね。高校野球の女子マネージャーが、経済書「ドラッカーの『マネジメント』」を間違って買ってしまい、はじめは難しくて後悔するのですが、野球部のマネジメントにも生かせることに気付き、野球部を改革して甲子園に導く…という青春小説感覚のビジネス書です。

 当職は本来「ビジネス書」というものをあまり買いません。仕事をする上では、「理論」より「経験」や「感覚」が大事だと考えているからです。常に、「お客様のために」「お客様の立場に立って」という感覚を持って、これまでの経験を活かして仕事をしていれば間違いはない、というのが当職の信条です。「もしドラ」に関しても、読み始めるまでは「本当にためになるのか?」「本当におもしろいのか?」半信半疑でした。でも、読み始めたら、「読み物」として純粋におもしろい上に、仕事に通ずる点も多く、すぐにのめりこんでしまいました。翌日、早速事務所スタッフにも読むことを勧めてしまったほどです。

 特に共感したのが「マーケティングの必要性」についてのくだりです。「マーケティング」とは簡単に言うと「顧客からの情報収集」のことです。「もしドラ」では、野球部の顧客を野球部員たち自身だと考え、その顧客たる野球部員の要求(本音)を面接によって聞き出し、その結果を野球部の改革に活かしていきます。


 先月の通信でも触れましたが、当事務所では依頼の前に「来所相談」を行うようにしています。登記、相続、債務整理等当事務所が取り扱ういずれの業務についても(不動産売買の立会等、事前にお客様にお会いすることのない一部の業務を除きますが)、できる限りお会いして直接話を伺います。直接面談しないと、「お客様が何を求めているか」(顧客のニーズ)を聞き出すことができないと考えているからです。電話やメールでは顧客の本当のニーズを掴むマーケティングはできません。

 近年、我々司法書士や弁護士さんの業界でも、広告やホームページ等で「全国対応」をうたう事務所が多くあります。そういった事務所の多くは、資格者による面接相談を行わず、電話やメールの相談のみで手続きを受任していると聞きます(電話オペレーターが話を聞くだけで、資格者が全く対応しない事務所もあるとか…)。そんなことで本当のマーケティングができるのでしょうか?

 他の事務所のことをとやかく言う気はありませんが、当事務所は今後も「来所による面接相談」にこだわって、本当のマーケティングを行った上で、お客様のニーズに沿って業務を進めていきたいと考えています。

解説画像 解説:登記・相続・裁判等司法書士に関連の深い事項を解説していきます。


「相続放棄」と「限定承認」 


 ~ 「マイナス」の遺産を相続した場合

 当事務所へ寄せられる相続に関する相談の多くは亡くなった方の「プラス」の財産をどう扱うか(相続人のうち誰が引き継ぐか)といったものです。ただ、借金等の「マイナス」の財産をどうすれば良いかといった相談が一定数あるのも事実です。本号では相続財産が「マイナス」である場合の救済手続「相続放棄」と「限定承認」について解説します。


 
 相続が開始した場合,相続人は次の三つのうちのいずれかを選択できます。
 
 相続人が,②の相続放棄又は③の限定承認をするには,家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。



 相続開始後(相続の開始が合ったことを知った後)、相続放棄・限定承認をせずに3ヶ月が経過
 →「単純承認」したものとされる
※ 相続開始後に相続財産を処分したり、相続放棄をしたあとでも、相続財産を隠匿したり、自己のために消費した場合には、これを無効とし、単純承認したものとみなされる(法定単純承認)
 



① 申述人
   相続人(相続人が未成年者または成年被後見人である場合には,その法定代理人が代理して申述します。)
※ 未成年者と法定代理人が共同相続人であって未成年者のみが申述するとき(法定代理人が先に申述している場合を除く。)又は複数の未成年者の法定代理人が一部の未成年者を代理して申述するときには,当該未成年者について特別代理人の選任が必要です。

② 申述期間
   自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内
※ 相続人が,自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続財産の状況を調査してもなお,相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合には,申立てにより,家庭裁判所はその期間を伸ばすことができます。

③ 申述先
   被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

④ 申述に必要な費用
   申述人1人につき収入印紙800円(連絡用の郵便切手も必要)

⑤ 申述に必要な書類
   相続放棄の申述書・申述人の戸籍謄本・被相続人の除籍(戸籍)謄本・被相続人の住民票の除票 等



① 申述人
  
相続人全員が共同して行う

② 申述期間  ③ 申述先  ④ 申述に必要な費用
   → 相続放棄と同じ

③ 申述先
   
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

④ 申述に必要な費用
   申述人1人につき収入印紙800円(連絡用の郵便切手も必要)

⑤ 申述に必要な書類
   相続放棄の申述書・申述人の戸籍謄本・被相続人の除籍(戸籍)謄本・被相続人の住民票の除票 等
   及び 
「財産目録」

⑥ 限定承認後の手続
  1) 限定承認後5日以内に一切の相続債権者及び受遺者に対し官報への公告が必要
  2) 債権者や遺贈を受けた人に対して相続財産から弁済する(不動産などは競売手続等で清算)
  3) 相続開始時に相続財産を時価で譲渡したものとみなされ譲渡所得税が課せられる
 
 →手続が煩雑な上、税務上不利益を受けることもありますので「限定承認」の選択は慎重にしてください

 相続手続についてご不明な点は当事務所へお気軽にご相談ください。