ながしま事務所通信


~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~

第100号 平成25年10月 発行

コラム画像 コラム:当職が感じたことを徒然なるままに綴ります。

「ご時世」とはいえ…
 

  ~ なじみのタバコ屋の閉店に思う

 当職は、ヘビースモーカーです。「禁煙できない」のではなく、「禁煙しようと思ったことがない」と言って、この禁煙ブームのご時世にも関わらずタバコを吸い続けています。

 先月の末、当職と長いつきあいになる近所のタバコ屋さんが閉店してしまいました。当職はもう十年以上、そのタバコ屋さん以外でタバコを買うことはありませんでした。常連さんの好きなタバコの銘柄をおぼえているのは当然のことで、店構えもこぎれいで、おばちゃんの人柄も良く、当職の知る限り『最高のサービス』を提供するタバコ屋さんでした。そんな『最高』のタバコ屋さんでも、ご時世には勝てません。健康のための禁煙ブーム、タバコの値上げ、タスポの導入による自動販売機の売上減少、さらには新しい道路ができて人通りが減ってしまったことにより、ついに閉店することになってしまったのです。『最高のサービス』も『ご時世』には勝てない…。寂しい限りです。

 我々司法書士の業界も、景気や法律の改正といった『ご時世』に振り回される業界のひとつです。数年前までは、債務整理や過払い請求が盛況で、テレビコマーシャルまでする事務所があったくらいでしたが、出資法の改正によりそういった仕事は激減しました。当事務所はもともと不動産登記を中心に扱っていたため、影響は少なく済みましたが、今後消費税の増税等により不動産不況なんてことになれば、不動産登記の仕事も減ってしまうかもしれません。他の事務所を上回る『最高のサービス』を提供していても、『ご時世』で仕事自体がなくなってしまってはどうしようもないのです。

 
そんな『ご時世』の中、生き残っていくためには、頭角を現すにはどうすれば良いか?『最高のサービス』を提供し続けるのはもちろんのこと、その上で『ご時世』に合わせたニーズを掘り起こしていくしかありません。生前贈与や遺言作成を含む相続関係の業務、高齢化にあわせた成年後見業務、債権譲渡登記等を活用した債権回収、少額の訴訟案件etc…。当事務所も、不動産登記業務に軸足を置きつつ、様々なニーズに対応できるよう常に研鑽を重ねています。 

 うちの業界に限らずでしょうが、大変な『ご時世』ですよね…

解説画像 解説:登記・相続・裁判等司法書士に関連の深い事項を解説していきます。


非嫡出子の相続権

 

  ~ 最高裁9月4日判決

去る9月4日、最高裁で「非嫡出子の相続分は、嫡出子の半分としている民法900条4号の規定は違憲」との判決が下されました。報道等でも大きく取り上げらましたが、そもそも、「嫡出子」「非嫡出子」って何?という方もいるものと思われますので、本号ではそのことについて解説したいと思います。

 

「嫡出子」とは、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子を言います。(下記に該当する子)
•婚姻中に妊娠した子
•婚姻後201日目以後に生まれた子
•父親の死亡後または離婚後300日以内に生まれた子
•未婚時に出生し父親に認知された子で、後に父母が婚姻したとき
•未婚時に出生した後に父母が婚姻し、父親が認知した子
•養子縁組をした子

「非嫡出子」とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子供で、上記に当てはまらない子を言います。



(1)母親と同じ戸籍に入籍
 非嫡出子は、父母が認知することにより親子関係が生まれます。しかし、母子関係は認知などしなくても、分娩によって当然に発生するものとされています。
 この場合、子は母の戸籍に入り、母と同じ姓を名乗り、母の親権で保護され、母の遺産を相続することになります。

(2)父親にも認知をされると
 父に認知されていない、いわゆる私生児は、父の遺産を相続することができません。
しかし、父が自身の住所地か本籍の役場、または子の本籍の役場に認知届をすることによって、父子関係を持つことができるのです。
 認知をされても、家庭裁判所の許可を得ない限り母の戸籍に入ったままですが、父が認知した事実は父子いずれの戸籍にも記載がされます。

(3)父母との続柄の欄の記載
 平成16年10月以前は、非嫡出子の戸籍上の父母との続柄欄には、単に「男」「女」とだけ記載されていました。しかし、差別的であるとの理由から、平成16年11月以降は、出生の順に「長男(長女)」、「二男(二女)」等と記載されることに変更されました。既に戸籍に記載されている場合は、申出により、記載の変更履歴を残さないよう戸籍の再製がされます。



 非嫡出子は、認知をされることによって親子となるため、当然に相続権も発生します。
その法定相続分はというと、「嫡出子の半分」となります。
 →この部分について最高裁は平成25年9月4日判決で違憲であると判断しました。

 
 
 うっかりすると、同じお腹を痛めて生んだ子供同士で、法定相続分に差が出てしまうというケースです。
 女性Aは未婚時に子Bを生みましたが、その後子Bの父親と異なる男性と結婚しました。夫婦の間には子Cが生まれ、その後に離婚し、母子3人で仲良く暮らしていました。
 ところが、Aがなくなり相続が開始します。各人の法定相続分は子Bが1/3、子Cが2/3となるのです。法律上、子Bは非嫡出子、子Cは嫡出子であり、同じ母から生まれたにもかかわらず身分に差があったためです。

 最高裁判決がでたことで、近い将来民法の改正がなされるでしょう。ただ、現時点でまだ改正はなされていないため、「遺言」を残す等の対応が必要と思われます。
 ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。