~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~
第1号 令和2年9月 発行
特別代理人と相続 ~ 相続人に未成年者等がいる場合
A COLUMN ~記事~
司法書士の高齢化 ~ 2人の新人?司法書士
少し驚いているのですが、コロナ渦においても愛知県内の不動産関係の消費は落ち込んでいないようです。結果、当事務所も多忙を極め、このたび、2人の新人司法書士を当事務所に迎え入れることになりました。新人とはいえ、年齢は40代と50代の見た目ベテランの新人司法書士です(笑)。10年前は当事務所の司法書士の平均年齢は20代後半だったのですが、平均40代なかばのおっさん事務所になってしまいました(泣)。
近年、司法書士の合格者(受験生)の高年齢化が際立ってきています。将来AIに仕事を取って変わられるという不安からか、はたまた司法試験の予備試験の導入(法科大学院に行かなくても弁護士になれる)の影響か…。実際、ここ数年の合格者は平均年齢40歳くらいだと聞きます。当職が司法書士試験に合格した約20年前は20代がほとんどだったのになぁ。
結局、若い子たちが司法書士という仕事に魅力を感じなくなっていることは事実だと思います。司法書士は業界全体として、政界にも働きかけ、訴訟代理権や財産管理、後見等新たな分野への進出や、登記手続における本人確認情報制度(権利証等がない場合に司法書士が本人確認をすることで登記申請が受け付けられる制度)の導入等、その存在意義を高める努力をしてきました。にもかかわらず、若者たちが司法書士を目指さなくなったのはどうしてでしょうか?
司法書士を目指す若者が増えないのは、結局、アピールが足りないのだと当職は分析しています。司法制度改革によって弁護士さんの数が増え、若い弁護士さんの仕事が少なくなっているという話も聞きますが、司法書士は多くの事務所が資格者不足に悩んでいるくらいで、現状は司法書士の方が仕事が多く、はっきり言って「食えます」。やりがいもあって食える仕事だということを、各方面でもっとアピールしていかないと、現状は変わらないのかもしれません。当職も微力ながら司法書士の魅力を積極的にアピールしていきたいと思います。(実際はこのブログでコメントする程度ですが…)
菅田将暉あたりが主演の司法書士の連続ドラマでも始まらないかなぁ…
EXPLANATION ~解説~
特別代理人と相続 ~ 相続人に未成年者等がいる場合
遺産相続にあたって未成年者の相続人や、認知症などが原因で成年被後見人になっている相続人がいる場合には、「特別代理人」を選任する必要があります。本号では、特別代理人が必要になる具体的なケースや、選任する際の流れを解説します。
1.特別代理人とは
未成年者や成年被後見人はその判断能力を理由に、遺産分割協議への参加をはじめとした相続の手続きを行うことを認められていません。
そのため未成年者・成年被後見人である相続人を含めて遺産分割を行う際には、代わりとなって参加する代理人を立てる必要があるのです。
この時に未成年者にとっての親など、本来であれば代理人となるべき人と利益が相反している場合など、代理人として不適当とされた場合、第三者を一時的な代理人として家庭裁判所に選任してもらいます。これが「特別代理人」です。
2.相続において特別代理人の選任が必要な場合
① 未成年者とその親が相続人となる場合
例えば妻と未成年の子を持つ男性が亡くなった時、妻は男性の配偶者として、子は男性の実子として、どちらも遺産を相続する権利を持っています。
このケースでは子の相続分を減らせば妻(子にとっての親)がより多くの遺産を相続することができる(利益が相反している)ため、妻の代わりとして特別代理人が必要になるのです。
② 成年被後見人と成年後見人が相続人となる場合
認知症などが原因で成年被後見人となっている人とその後見人が同時に相続人になった場合(母親の成年後見人に息子がなっている場合で、父親が亡くなった場合等)にも、同様に特別代理人を選任する必要があります。
なお被後見人の財産が多いなどの理由で後見人に「後見監督人」が付いている時には、後見監督人が代理人の役割を担うため、この必要はありません。
3.特別代理人選任の流れ(未成年者が相続人の場合)
① 必要書類等
○ 申立書
司法書士または弁護士に作成してもらうことが多いですが、裁判所HPからダウンロードすることも可能です。
○ 戸籍等
未成年者(成年被後見人)とその親(成年後見人)の戸籍謄本、特別代理人の候補者の住民票又は戸籍附票がそれぞれ必要です。
○ 利益相反に関する資料
どのように遺産を分割する予定であるかを示した遺産相続分割協議書(案)等
○ 印紙及び郵券
印紙800円と選任書を郵送するための切手
② 家庭裁判所における審理
必要な書類をそろえて申立てを行うと、家庭裁判所による審理が始まります。審理には1ヶ月程度かかり、「未成年者(成年被後見人)にとって不利な相続になっていないか」を基準に選任の認否が決まります。
③ 特別代理人の決定
家庭裁判所によって選任が認められた場合には、特別代理人であることを示す「特別代理人選任審判書」が送付されます。
→ 相続財産が不動産の場合、他の相続人と特別代理人によって遺産分割協議書を作成し、選任審判書を添付して登記申請すれば相続による所有権移転登記が受け付けられます
ご不明な点がございましたら、当事務所へご相談ください。