裁判所提出書類作成

No.236 失踪宣告 ~行方不明者がいたら

    ~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~                                                   第236号 令和7年3月発行

    A COLUMN ~記事~

    父子家庭完結編 ~ 楽にはなるけど

     

    「当職は父子家庭です」。この通信でも何度か取り上げた話題ですが、本号で完結します。16年間男手ひとつで2.5人の子どもを育ててきましたが、一昨年息子が就職して一人暮らしを始めたのに続き、この春、娘が進学で家を出ます。学費や仕送りはまだありますが、16年間続けてきた子どもたちのための家事はひとまず終了となります。(0.5人はわが家の複雑な家庭環境によるものなので内容は割愛しますw)

    毎日献立を考えて買い物、朝晩食事を作って、日によってはお弁当。洗濯、掃除、子どもたちの世話や送迎。懇談会や授業参観、学校対応、PTAの役員も受けました。当職は両親を早くに亡くしているため、仕事しながらすべての家事育児を基本1人でこなすのは、正直なかなか大変でした。

    でも、今思うと「楽しかったなぁ」。父親役と母親役の両方をやらせてもらえるなんて、なかなかできない経験です。苦労もありましたが、常に目の前にはやらなければならないことがたくさんあって、毎日が充実していました。それが、この春からなくなってしまうんです。食事も外食や弁当が増えて作らないんだろうな。洗濯も毎日はする必要がなくなります。楽になるのはいいけれど、抜け殻のようになってしまわないかちょっと心配です。

    子どもが巣立っていくことはめでたいことです。子どもたちの世話がなくなって、一日何をすればいいかわからないなんていうのも、世間の親が皆経験することです。何事も前向きにとらえて、充分にできた時間を、愛犬と一緒にのんびり楽しみたいと思っています。

    でも結局ずっと仕事しているんだろうなぁ…

     

     

     

     

     

     

    EXPLANATION ~解説~

    失踪宣告 ~行方不明者がいたら

     

    相続等の手続をする際に、相続人の内一人と連絡がつかず、所在がわからないといった事例は多々あります。多くの場合、戸籍関係を調べることで、その人の住民票上の住所は判明するため、住所地に手紙を出したり、訪問したりすることで連絡が取れます。連絡が取れない場合、遺産分割の調停を起こすことになります。

    問題はただ連絡が取れないというのではなく、「行方不明」、つまり生きているか死んでいるかもわからない、といった場合です。行方不明者が相続人の場合であれば、家庭裁判所に「不在者の財産管理人」を選任してもらって遺産分割をするという方法もあります。しかし、夫が行方不明でのこされた妻が再婚できないとか、不動産等財産を残して行方不明になった父の財産を分割したいと言う場合には、不在ではなく「死亡したもの」としてもらわなければ手続を進めることができません

    そういった場合に家庭裁判所へ申立て、ある人の失踪が一定期間続いた場合に「死亡したもの」とみなしてもらうのが「失踪宣告」です。

     

     

     

     

    1 失踪宣告の種類

     

    ① 普通失踪 生死が7年間あきらかでない場合

    ② 特別失踪 戦争、船舶の沈没などの危難に遭遇した場合(危難が去った後1年間生死が明らかでない場合)に、利害関係人が家庭裁判所に請求することで失踪宣告がされます。

     

     

    2 普通失踪の手続

     

    特別失踪が適用される事例は希有なため、本通信では普通失踪の手続について取り上げます。

     

    <普通失踪の流れ>

    ① 不在者が7年間生死不明

    普通失踪を申し立てるには不在者の生存が最後に確認できた日から7年間生死不明であることが必要です。

     

    ② 失踪宣告の審判の申立

    利害関係人(配偶者、父母、受遺者、保険受取人等)が不在者の居所地(最後の住所地)を管轄する家庭裁判所へ申立します。

    ※ 添付書類

    ・ 不在者の戸籍謄本

    ・ 不在者の戸籍の附票

    ・ 失踪を証明する資料(警察署の家出人届出受理証明書、返戻された不在者宛ての手紙、家族の陳述書等)

    ・ 申立の利害関係を証明する資料(戸籍謄本等)

     

    ③ 官報掲載~失踪宣告

    失踪宣告の申立があると、家庭裁判所が不在者の生死が7年間明らかでないことについて調査します。

    そして、下記事項を家庭裁判所の掲示板に掲示し、官報(国の発行する新聞のようなもの)に掲載します。

    ・ 失踪宣告の申出があったこと

    ・ 不在者が生存している場合は一定の期間(3カ月)までにその生存を申し出ること

    ・ 上記届出がない場合は、失踪宣告がなされること

    ・ 不在者の生存を知っている者は一定の期間(3カ月)届け出ること

    ・ 申立人の氏名または名称、住所

    ・ 不在者の氏名、住所及び生年月日

    生存の届けがないまま、一定の期間が経過すると、家庭裁判所は失踪を宣告します。

     

    ④ 失踪宣告の届出(失踪届)

    失踪宣告がされた後、その事実を戸籍に反映させるために、失踪宣告を受けた人の本籍地又は住所地の市区町村役場へ「失踪届」を出す必要があります。

     

     

    3 失踪宣告後の手続

     

     失踪宣告があると、不在者が死亡したものとみなされるので、配偶者は再婚できるようになり、相続人は不在者の財産を承継します。

     

     

     

    ※ 特殊な事例ですが、当事務所では戦後の混乱期に亡くなって死亡届の存在が確認できなかった在日外国人の失踪宣告を申立てて相続の手続を進めたことがあります。

     

    ご不明な点がございましたら、当事務所へお問い合わせください。

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