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第126号 平成27年12月 発行
ひとくちに「戸籍」と言いますが…② ~ 相続手続に必要な戸籍等の具体例
A COLUMN ~記事~
長島、年賀状やめるってよ
1年が経つのは早いもので、今年も、もう師走です。師走の言葉の解釈は、「師匠の僧がお経をあげるために、東西を馳せる月(師馳せる)」というのが正しいらしいですが、現代では一般的に「年末は先生も走り回るほど忙しい」といった意味で捉えられていることが多いようです。当職も一応「先生」と呼ばれる職業であるから、というわけではありませんが、12月は1年で最も忙しい月のひとつであることは間違いありません。
12月は、年内に事を終わらせたいという心理からか不動産取引が多くなる上に、営業日数が少なく、忘年会、お歳暮、大掃除、年末恒例の行事ごとも重なるため、どうしたって忙しくなってしまいます。そんな中、毎年負担になってくるのが、「年賀状の準備」です。当職が自分で年賀状や宛名を印刷して準備するというのなら良いのですが、実際にその準備をするのは当事務所のスタッフです。仕事が忙しいさなか、営業時間中に年賀状の準備は物理的に無理なので、結局残業を重ねて、時には休日出勤までして毎年がんばってくれているのです。
年賀状はそもそも、平安時代から続く年始の挨拶が明治時代に郵便を使ったものに簡略化されたものだと言われています。当職はもともと、古くからの慣習は嫌いではありません。年賀状も、毎年の近況を知人に知らせ、新年の挨拶をするという意味で、なくなって欲しくない大変すばらしい日本の慣習だと思っています。ただ、当事務所においては、近年、「とりあえず毎年出さなければいけないもの」といった、スタッフ任せの「カタチだけのもの」になっていることが否めませんでした。
その「カタチだけのもの」のために、スタッフに過度な負担を強いることは当職の本意ではありません。そこで、思い切って、当事務所は、年賀状を来年から廃止することにしました。年始の挨拶をしないということは、大変失礼になるとは存じます。年賀状を止めた分、年始にできる限り多くの方にお目にかかって、直接当職から挨拶を申し上げたいと思っています。また、直接お会いできない場合、本通信をもって新年のご挨拶に代えさせていただくことをお許しください。
年賀状を廃止することにより浮いた経費は、「あしなが育英会」等の社会福祉事業に寄付することを考えております。
EXPLANATION ~解説~
ひとくちに「戸籍」と言いますが…②
~ 相続手続に必要な戸籍等の具体例
相続手続には「戸籍」が必要になります。先号で、その「戸籍」について種類や取得方法といった基礎知識を解説させていただきました。本号では、相続手続の際、具体的にどのような「戸籍」等が必要となるかについて解説させていただきたいと思います。
① 手続によって必要な「戸籍」等は異なるの?
「相続手続」と言っても、不動産の名義変更(相続登記)や、裁判所へ書類を提出する相続放棄、遺言の検認、遺産分割調停、銀行預金の解約手続等、様々な手続があります。それぞれの手続によって、必要な「戸籍」等が異なるように思われるかもしれませんが、実は基本的には一緒です。
どうして一緒かというと、相続手続に「戸籍」等が必要な理由を考えればわかります。相続手続の際に「戸籍」等を提出するのは、「誰が相続人であるかを証明するため」です。いずれの手続においても、同じように誰が相続人となるかを示さなければ手続ができないので、必要な「戸籍」等は一緒になるのです。
② 必要な「戸籍」等の具体例(原則)
相続手続ので必要となる「戸籍」は、原則、下記の通りです。(事例としては、お父さんが亡くなって、お母さんとその子が相続人となる場合を想定するとわかりやすいです。)
① 「被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・改正原戸籍」
被相続人(父)が生まれてから亡くなるまでに戸籍によって、配偶者(母)が誰で、誰と誰がその子どもであるか、また認知した婚外子等がいないかどうかを証明します。
例えば、出生時の戸籍(父の父が筆頭者の戸籍)が北海道にあって、結婚して東京に自分を筆頭者とする戸籍をつくって、その後愛知県に転籍後死亡した場合、それぞれの市区町村の役場からそのすべての戸籍、除籍、改正原戸籍を取り寄せる必要があります。
② 「相続人全員の現在戸籍」
相続人が生きていて、相続権があることを証明するために必要となります。
相続人(父)の子であっても、父より先に死んでいたのであれば当然相続権はありません。もし子が先に死んでいる場合でも、その子に子ども(父からすると孫)がいる場合には、孫が相続人となるため、孫の現在戸籍が必要になります。(父より先に死んだ子に他に子どもがいないか証明するために、子の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・改正原戸籍も必要です。)
③ 「被相続人の住民票又は戸籍の附票」
被相続人の住所変更等を証明するために必要となることがあります。
④ 「相続人の住民票(本籍付き)又は戸籍の附票」
遺産を取得する相続人の住所を証明するため、また、相続人の本籍地と住所地が異なる場合に同一人物であることを証明するために必要となります。
③ 遺言証がある場合(例外)
被相続人が生前に遺言をのこされている場合には(相続人全員を証明する必要がないため)、必要な「戸籍」等が変わってきます。
① 「遺言書」
「戸籍」等ではありませんが、当然、「遺言書」も必要です。(公正証書遺言の場合は正本または謄本、自筆証書遺言の場合は裁判所の検認(※)を受けた遺言書)
※ 自筆で書かれた遺言の場合には裁判所で検認という手続を経る必要があります。遺言の検認の手続に必要な「戸籍」等は上記②(原則)の場合と同じになります。
② 「被相続人の死亡時の戸籍・除籍・改正原戸籍」(1通のみ)
被相続人が亡くなったことのみを証明できれば足りるため1通のみで大丈夫です。
③ 「遺産を取得する相続人の現在戸籍」
遺言で遺産を相続するとされた者のみの現在戸籍で大丈夫です(他の相続人のものはいりません)。
④ 「被相続人の住民票又は戸籍の附票」
⑤ 「遺産を取得する相続人の住民票(本籍付き)又は戸籍の附票」
ご不明な点がございましたら、当事務所へお問い合わせください。