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No.224 所有者不明土地解消に向けて ④ ~ 民法のルールの見直し

    ~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~                                                    第224号 令和6年3月発行

    A COLUMN ~記事~

    熟年からの挑戦 ~ 50代の新規開業

    当事務所開業から20年近く経ちますが、その間10人以上の司法書士が独立開業しました。昨年も当事務所から2名の司法書士が開業いたしました。うち1人は当職より年上、50代での新規開業になります。80歳の米国大統領が活躍する昨今、年齢は関係ないのかもしれませんが、20代、30代と比べると、体力的にも精神的にも無理は効かなくなってくることは拭えない事実です。それでも一念発起した「熟年からの挑戦」を、陰ながら応援していきたいと思っています。

    以前、この通信でも触れておりますが、ここ10年あまりで、司法書士の合格者の高年齢化が急速に進みました。ほんの15年ほど前は、合格者の年齢の平均は30歳くらいでした。景気の回復や、AIの発達による士業の将来性に対する不安等により、若年層の受験生が極端に減り、今や合格者の平均年齢は41.14歳(令和5年試験)だそうです。逆の考え方をすると、40歳を超えても新しいチャレンジをする中高年が増えたと見ることができるのかもしれません。

    当職ももう50歳。いや、まだ50歳です。体力では構わないかもしれませんが、若者にはない培った人生経験があります。お客様から見ても、若い司法書士より、熟年の司法書士の方が安心感を与えることができます。古くさい言い方かもしれませんが、まだまだ若い者には負けません。

    開業した彼同様、当職もまだ挑戦を続けていきたいと思っています。

     

     

     

     

    EXPLANATION ~解説~

    所有者不明土地解消に向けて ④ ~ 民法のルールの見直し

     

    不動産登記簿より所有者が判明しない「所有者不明土地」を解消するために、相続登記の義務化する制度や相続土地国庫帰属制度等が設けられましたが、併せて、所有者不明土地についての民法の改正も行われました。(令和5年4月1日施行)

     

     

     

    1 土地建物に特化した財産管理制度の創設

    所有者不明土地・建物や、管理不全状態にある土地・建物は、公共事業や民間取引を阻害したり、近隣に悪影響を及ぼすなど問題となります。そこで、所有者が不明であったり、所有者により管理が適切にされていない土地・建物を対象に、新たな財産管理制度が設けられました。

     調査を尽くしても所有者やその所在を知ることができない土地・建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができる

    (所有者による管理が不適当であることによって他人の権利が侵害され又はそのおそれがある場合も同様)

     

     

    2 共有制度の見直し

    共有状態である不動産について、所在等が不明な共有者がいる場合、その利用に関する共有者間の意思決定をすることができなかったり、処分できずに公共事業や民間取引を阻害しているといった問題が指摘されています。そこで、共有者の利用や共有関係の解消をしやすくする観点から、共有制度全体について見直しが行われました。

    ・ 共有物につき軽微な変更をするために必要な要件の緩和(全員の同意は不要で、持分の過半数で決定可

    ・ 所在等が不明な共有者がいる場合には、他の共有者は地方裁判所に申立てその決定を経て

     ① 残りの共有者の持分の過半数で管理行為ができる(共有者の中から使用者を一人に決める等)

     ② 残りの共有者全員の同意で変更行為をすることができる(農地を宅地に造成する等)

     

     

    3 遺産分割に関する新たなルールの導入

    相続が発生してから遺産分割がなされないまま長期間放置されると、相続が繰り返されて多数の相続人による遺産共有状態となる結果、遺産の管理・処分が困難になります。また、遺産分割をする際には、法律で定められた相続分(法定相続分)等を起訴としつつ、個別の事情(生前贈与や療養看護等の特別の寄与等)を考慮した具体的な相続分を算定するのが一般的です。しかし、長期間が経過するうちに具体的相続分に関する証拠等がなくなってしまい、遺産分割が難しくなるという問題があります。そこで、「長期間経過後の遺産分割のルール」が新たに設けられました。

    ・ 被相続人の死亡から10年を経過した後にする遺産分割は、原則、具体的相続分を考慮せず、法定相続分又は指定相続分によって画一的に行う

     

     

    4 相隣関係の見直し

    隣地の所有者やその所在を調査してもわからない場合には、隣地の所有者から隣地の利用や枝の切り取り等に必要となる同意を得ることができないため、土地の円滑な利活用が困難となります。そこで、相隣関係に関するルールの様々な見直しが行われました。

    ・ 境界調査や越境してきている竹木の枝の切取り等のために、隣地を一時的に使用することができるとともに、隣地所有者やその所在が調査してもわからない場合にも隣地を使用することができる

    ・ ライフラインを自己の土地に引き込むために、導管等の設備を他人の土地に設置する権利や、他人の所有する設備を使用する権利があることを明確化、およびそのためのルールの整備

    ・ 催促しても越境した枝が切除されない場合や、竹木の所有者やその所在を調査してもわからない場合等には、越境された土地の所有者が自らその枝を切る取ることができる

     

     

     

     

    ご不明な点がございましたら、当事務所へお問い合わせください。

    ながしま事務所通信

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