~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~
第129号 平成28年3月 発行
成年後見人の仕事 ~ 何ができて、何ができないの?
A COLUMN ~記事~
動く支店 ~ 作業車を導入しました
当事務所では近年、岡崎市以外での仕事が増加しております。西三河地域はもとより、最近は名古屋市や尾張、知多といった当事務所から片道1時間程度の移動を要する案件が増えているのです。たとえ遠方であっても、求められれば答えたい。よほど遠方でなければ、依頼を断るようなことはできません。結果、当事務所の司法書士は1日中車で走り回っています。1日の半分が移動で終わるなんて日も少なくありません。
例えば、名古屋市の銀行から「抵当権設定」の依頼があった場合、まず「抵当権設定契約書」の白地をその銀行まで取りに行きます。事務所へ戻って、その白地に物件(不動産の表示)を印刷し、作成した他の必要書類と共に銀行へ届けます。後日、お客様の契約が完了したら書類と権利証、印鑑証明書等を銀行まで取りにいきます。また、必要に応じてその契約に立ち会います。融資実行日には名古屋の法務局へ申請に行き、登記が完了すれば銀行まで登記完了書類一式を届けます。結果、1つの案件で多い時には5~6回名古屋まで往復しなければなりません。
こういった現状を打破するために、当事務所は秘密兵器を導入しました。それが「作業車」です。軽バンの後部に作業机と椅子を設置し、パソコン・プリンター・スキャナー等の機器を搭載。Wi-Fi環境も整え、外にいながらにして、事務所にいるのと同じだけの作業ができるという画期的な車両です。全国でも、司法書士事務所がこういった車両を導入した例は少なく、愛知県下では初とのことです。
この車両の導入により、銀行に書類を取りに行った際に、その場で物件打込、書類作成まで済ませて、30分後にはすぐ銀行へお届けなんて離れ業も可能になり、移動時間の短縮はもちろんのこと、スピーディーなサービスの提供が可能になります。それだけではなく、相続の相談に行った先で遺産分割協議書を作成したり、途中で内容が変更になった場合にその場で書類を修正したりと、用途は様々です。
ただ、作業ができる車を導入したというのではありません。当事務所は「動く支店」を手に入れたのです。単なる業務の効率化にとどまらず、更なるサービスの向上につなげていきたいと当事務所は考えています。
EXPLANATION ~解説~
成年後見人の仕事 ~ 何ができて、何ができないの?
平成12年に「成年後見制度」が開始して15年が経過しました。高齢者や障がい者等で判断能力を欠く方のために、裁判所で後見人を選任してもらい、その後見人が本人(成年被後見人)に代わって財産管理や様々な法律行為をするという制度です。近年はこの制度について、広く一般に認知されるようになってきましたが、具体的に、どこまでの事を後見人がすることができるのか、といった「成年後見人の仕事の範囲」といったところまでは理解している方はほとんどいないのが実情です。 そこで、本号では「後見人の仕事」について解説します。
① 財産管理と身上監護
成年後見人の仕事には、大きく分けて「財産管理」と「身上監護」の2つがありますが、ここでいう身上監護には、現実の介護行為は含まれません。また、食料品や衣料品等を購入するような日常生活に関する行為については、本人が自由におこなうことができます。
なお、本人の居住用不動産を処分するには家庭裁判所の許可が必要となります。ここでいう「処分」は売買だけでなく、賃貸や抵当権の設定等の行為も含まれます。
財産管理
・ 現金、預貯金、不動産等の管理
・ 収入・支出の管理
・ 有価証券等の金融商品の管理
・ 税務処理(確定申告、納税など)
身上監護
・ 医療に関する契約
・ 施設への入所契約
・ 介護に関する契約
・ 生活、療養看護に関する契約
② 就任時の主な仕事
① 本人および関係者との面談
② 法務局より登記事項証明書の取得
③ 財産関係の書類や印鑑の受け取り
④ 銀行、保険会社等への届出
⑤ 財産目録の作成と裁判所への提出
⑥ 年間収支額の計画
③ 裁判所への報告
家庭裁判所は、必要があればいつでも成年後見人に対し、報告を求めることができますが、実務上は年に1回程度の報告で済むことが多いです。 ただし、本人の居住場所が在宅から施設に変わったり、入居先の施設を移る等して、本人の生活環境に変化があった場合や、 重要な財産を処分した場合は、その都度、家庭裁判所へ報告する必要があります。 なお、家庭裁判所からの指示に従わずに、定期的な報告を怠ると、家庭裁判所が成年後見人を解任することがあります。