~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~
第130号 平成28年4月 発行
会社の役員の任期 ~ 役員変更を怠ると科料の対象となります
A COLUMN ~記事~
ジャー ~ 過去最高に忙しかった年度末を終えて
日銀のマイナス金利政策で住宅ローンの税率が低くなった影響か、消費税増税を来年に控えた駆け込み需要か、はたまたトヨタ系列の好況がまだ続いていることからか、愛知県下の住宅需要は衰えを知りません。当事務所の不動産登記業務(特に売買)の件数も、この3月に過去最高を記録しました。経営者としては大変喜ばしいことですが、多忙すぎるが故の問題が生じている以上、喜んでばかりもいられません。
当事務所のような少人数の組織において、所長がマネージメント業務のみを行い現場に出ないということはありえません。忙しくなればなるほど、当職が現場(不動産売買の立ち会い業務等)に出る頻度は増えることになります。当職は、プロ野球で言えば、古くは野村克也、最近では古田敦也、谷繁元信のように、監督の業務をこなしながら、捕手として実際にグラウンドに立つ「プレイングマネージャー」なのです。実際、忙しかったこの3月、ほぼ毎日、当職は現場でフル稼働していました。
毎日午前中から昼過ぎにかけ、1日平均1件以上の立ち会い業務をこなし、夕方事務所に戻ったら取引先業者との連絡、相談業務、登記申請書類のチェック、見積書の作成等を行います。また、夜間・休日を問わず当職の携帯電話にはお客様や業者さんから業務連絡や相談の電話がかかってきます。その上で、事務所の労働環境の効率化や人員の増強のための採用業務、経理関係の振り込みや帳簿のチェック等総務関係の業務をこなしています。当職は本当に忙しい「プレイングマネージャー」なのです。
ただ、当事務所の場合、その忙しい「プレイングマネージャー」より忙しく働く者たちがいます。当事務所スタッフは皆、当職が夜事務所を後にした後も、連日遅くまで残業してこの繁忙期を乗り切ってくれました。当職と同じように立ち会い業務や相談業務をこなしながら、業者さんや銀行への連絡、登記申請書類や見積書の作成、法務局への登記の申請、登記完了後の処理や書類の届け…etc、八面六臂の活躍をしてくれています。いわば、投手と野手の二刀流をこなす大谷翔平が、ついでに一塁と三塁の守備をしているようなものです。
本当に当事務所スタッフたちの活躍には、頭があがりません。彼らへの負担を減らし、労働条件や労働環境をもっと良くしていかなければならないと、切に感じた3月でした。
EXPLANATION ~解説~
会社の役員の任期 ~ 役員変更を怠ると科料の対象となります
平成18年5月に施行された「会社法」により、株式会社の役員の任期は10年まで伸張できるようになりました。以前は2年だったため、2年ごとに「役員変更」の登記をしなければならなかったことを思うと、負担は大きく減ったのですが、今まで定期的に行っていたことを10年もしないとなると、役員変更登記を失念してしまう会社も多くでてくることが考えられます。
役員変更は、任期が満了したら、仮に取締役・監査役のメンツが代わらなくてもしなければなりません。怠っていると科料(罰金のようなもの)の制裁が科されます。会社法施行から10年を迎える今年以降、科料の制裁をうける会社が増えることが考えられます。
そこで、本号では、役員の任期についてとりあげます。
① 役員の任期
◎ 会社法施行以降の役員の任期
取締役 原則 2年 (定款に定めることで1年から10年まで伸縮可能)
監査役 原則 4年 (定款に定めることで10年まで伸長可能)
株式の譲渡制限がついた、いわゆる取締役会の非設置会社では、定款において最長10年に延ばすことができます。また、取締役については原則の2年未満に縮減することもできますが、監査役の任期を4年未満にすることは認められません。
② 任期を決める時の注意
新会社法施行後、役員の任期を簡単に10年にすることができるようなりました。10年にすることによって役員変更登記を10年間しなくてもよいというメリットがありますので多くの会社が10年を採用しています。
役員の任期を10年にすると、役員登記までの間隔が長いので確かに便利ではあります。しかし、逆に考えると、役員に任期途中で辞めてもらいたいと言うときには不便です。
任期途中で役員に辞めてもらうには「辞任」と「解任」2つの方法があります。その役員の承諾が得られて「辞任」してもらうのなら問題はありませんが、承諾してもらえず「解任」しなけらばならなくなった場合問題が生じます。解任の情報は履歴事項証明書(登記簿謄本)に残るので、過去に何らかの問題があった会社と判断され信用を失う恐れがあります。また、解任された役員から訴訟を起こされたり、残りの任期分の役員報酬を請求されたりすることも考えられます。
役員の任期を短く設定することは、役員登記を頻繁にしなければならない煩雑さはありますが、任期途中での役員の退任のリスクを考えると、会社の経営上は無難であるとも言えます。
役員の重病・犯罪・会社に対する背任行為・海外移住・その他人間関係の悪化など会社にとって役員として好ましくない状況になるようなアクシデントは全くないとは言い切れませんので、役員の任期の設定には役員の人柄・年齢・人間関係、他の役員や株主の意見を尊重しながら慎重に設定することが重要です。
③ 任期満了による役員変更の手続
役員の任期が満了すると、後任の役員を選任しなければなりません。役員を選任するには「株主総会」を開催しなければなりません。また、会社によっては、代表取締役選任のために「取締役会」を開催する必要もあります。選任された役員が「就任を承諾」すれば、後任の役員の就任がなされたことになります。ちなみに、同一の者が同じ役職に就任することも可能です(これを「重任」と言います)。
その後、役員変更の「登記」をしなければなりません(原則、就任後2週間以内)。この、登記を長期間怠っていると、裁判所から科料の制裁が科されることになるので注意が必要です。
役員変更の登記について(参考)
http://www.moj.go.jp/ONLINE/COMMERCE/11-1.html