~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~
第131号 平成28年5月 発行
どうして「登記」しなければいけないの? ~ 民法第177条
A COLUMN ~記事~
42歳のおじいちゃん 9歳のおばさん
私事で恐縮ですが、先月初孫が生まれて、当職は「おじいちゃん」になってしまいました。昨年上の娘の妊娠がわかり、今年のはじめに結婚、順番が違うのは、今の世の中よくあることだし、年齢も22歳なので「少し早いかなぁ」という程度、そして何より、本人たちが幸せそうな顔をしているので、おめでたいこととして受け止めていました。そして、帝王切開でしたが、無事出産。健康で、かわいい男の子でした。今は、娘と孫がわが家に里帰り中で、毎日かわいい笑顔をふりまいてくれています。
わが家は父子家庭です。母親がいないため当職も仕事に家事に育児にと多忙を極め、十分な花嫁修業もさせぬまま娘を嫁に出してしまいました。この子が本当に出産を経験して、母親になれるのだろうか?家事や育児もやっていけるのだろうか?正直、大変心配していました。また、娘夫婦は春日井に住んでいて、出産も春日井の病院だったので、何かあってもすぐに助けに行ってやれるというわけではありません。いったいどうなるんだろうという不安もありましたが、娘の旦那やそのお母さんらの協力もあって、無事に娘は母となることができました。「案ずるより産むが易し」とはよく言ったものです(娘の出産が「易し」だったとは思っていませんが)。
でも、まさか自分が40代前半にして、「おじいちゃん」になるとは、想像もしていませんでした。ちなみに、下の娘は若干9歳にして「おばさん」です。これで、わが家の家族構成は、40代の当職と、20代の娘夫婦、10代の息子、9歳の娘に0歳の孫という各世代を網羅したものとなります。30代が欠けていますが、当職が30代の嫁と再婚すれば、各世代コンプリートです。再婚活がんばらなきゃ。
EXPLANATION ~解説~
どうして「登記」しなければいけないの? ~ 民法第177条
不動産を売買や贈与、相続等で取得した場合、「登記」して、不動産の名義変更をしなければなりません。通常、その登記手続は司法書士に依頼することになるのですが、そもそも、どうして「登記」をしなければいけないのでしょうか。
①「不動産登記」とは?
不動産登記とは、私たちの財産である不動産(土地と建物)の面積や所在、所有者の住所・氏名を登記簿(公的な帳簿)に記載することをいいます。 登記簿は一般公開されていて、その不動産の権利関係などの状況が誰にでもわかるようになっています。 そうすることによって、取引の安全と円滑をはかる役割をしています。
不動産には名前を書くことができない(書けたとしてもそれをどこまで信用していいかわからない)ので、名義や権利関係をはっきりさせるために、「不動産登記」の制度ができたということです。
② 民法第177条(登記の必要性を示す根拠条文)
第177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
実は売買等により不動産の名義変更があった時、「登記」をすることは「義務」ではありません。民法第177条には、「登記しなければならない」とは書いてありません。「第三者に対抗できない」と書いてあるだけなのです。売買の当事者(売主・買主間)では、登記などしなくても「売買があった」ことを確認できます。ただ、その他の者(第三者)に対しては、登記しなければ「買主が取得した」ということを対抗(主張)できないのです。
③「第三者に対抗することができない」と問題があるの?
「第三者に対抗することができない」とはどういうことか? 事例をもとに解説します。
<事例> 不動産の二重譲渡の事例
ある土地を所有する「A」が「B」にその土地を1000万円で売買することにした。そこで、AとBは売買契約を4 月29 日に締結し、BはAに代金を支払った。(登記は義務ではないので、後からすればよいと考え申請しなかった)
その後、Aは同じ土地を1500万円で買いたいと「C」から言われ、(Bとの契約を解除することなく)、5月2日に売買契約を締結、同日代金の支払いがなされ、売買による所有権移転登記も完了した。
この事例の場合、土地を取得できるのは、先に契約をしたAか、先に登記をしたBか?
<結論> 先に登記を備えたCがAに優先する。
つまり、AB間の売買は成立しているが、登記をしなかったことで、Bは第三者にこの土地の取得を対抗(主張)できないのです。後から契約をしたCも、AB間の売買については当事者ではなく「第三者」です。Cは登記をしたことで、Bに対しても、その他の人に対しても、土地の取得を対抗(主張)できるのです。
だから、先に契約をしたBではなく、登記を備えたCがこの土地の所有者として認められるのです。
※ もちろん、土地を取得できなかったBは、Aに対して売買の無効と代金の返金を求めることができます。
登記をしないと、第三者に所有者として認められない。場合によっては、他の人に不動産を取られてしまう。だから、義務でなくても「登記はしなければならない」のです。
民法第177条の詳細は非常に難解で複雑です。さらに掘り下げて理解したいという方はwikibooks等を参考にしてください。