~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~
第156号 平成30年6月 発行
不動産の贈与④ ~ 「相続時精算課税」編
A COLUMN ~記事~
池の水全部抜く! ~ 徹底的にやろう!
娘の通う小学校(当職の母校でもあります)の正門のところに、約40年前につくられた池があります(通称「丸池」)。水が循環する自然の池とは違い、1年も経つと藻が大量に発生し、水も緑色に濁ってきてしまいます。そこで年に1度程度、PTAや教員、地元の有志によって丸池の掃除が行われます。今年も先日、その丸池の掃除が行われ、当職もPTAとして参加してきました。
掃除の際には、池の中の小魚や海老を捕まえて別容器に移し、池の水を全部抜きます。最近テレビ番組とかでも話題になっていますよね。テレビ番組のように外来種とか固有種とかの問題は丸池にはありませんが、一度完全に水を抜かないと、きれいに藻を除去することができないのです。約20人がかりで、デッキブラシでこすり続け、3時間ほどで掃除は終了しました。
水を全部抜かなくてもいいんじゃないの?とも思いますが、全部抜かないことには徹底的に掃除ができず、数ヶ月で緑の池に戻ってしまうでしょう。中途半端にこちょこちょやるより、とことん徹底的にやった方が効率がいいのです。テレビ番組の「池の水全部抜く」も外来種を根絶させるためには、水を「全部」抜かないと…という趣旨でしたよね。
何事も、その場しのぎの中途半端はよくありません。最近守りに入って中途半端になりがちな当職。時には「徹底的」にやる必要もあると手綱を締め直さないとと感じた次第です。
EXPLANATION ~解説~
不動産の贈与④ ~ 「相続時精算課税」編
不動産の贈与をする場合、通常であれば多額の贈与税がかかってしまいます。しかし、親子間の財産の贈与に関してまで贈与税を満額課すこととなると、親から子への財産の移転がスムーズに行われず、経済の流通が滞る事態が生じてしまいます。そこで国は「相続時精算課税制度」を定め、一定の要件を満たせば贈与税を支払わずに贈与を受けることができることにしたのです。
1.相続時精算課税制度とは?
相続時精算課税制度とは簡単にいうと、「相続の時に引き継がれる財産を、前倒しして生前に贈与してもいいよ」という制度です。あくまで前倒しなので、贈与時には贈与税がかからず、相続時に生前に引き継いだものも含めた財産全てに相続税をかけます。
相続時精算課税税度を利用することで、親や祖父母から子孫への贈与については2500万円まで贈与税は非課税となります。
(注) 相続発生時に贈与した財産の額を合算して申告する必要があります。
2.相続時精算課税を利用するための要件
① 適用対象者
贈与者:贈与した年の1月1日で60歳以上の父母または祖父母(正確には直系尊属)
受贈者:贈与を受けた年の1月1日で20歳以上の子供(相続時に相続人と推定される人に限る)または孫
(代襲相続人、養子もOK)
② 対象財産・回数
制限なし
※ 不動産を贈与する場合は、贈与による「所有権移転登記」が必要になります。
③ 非課税限度額
贈与財産の合計が2500万円までは非課税。
2500万円を超える分は、一律20%の贈与税がかかります。
④ 手続
相続時精算課税制度は、受け取った人がその制度を利用するかどうか選択します。税務署ではその制度を利用したかどうかわからないので、利用した旨を税務署へ届け出る必要があります。
また、贈与を受けているので贈与税の申告をする必要もあります。
贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に税務署で申告を行います。
3.相続時精算課税の注意点
① 暦年課税に戻せない
一度、相続時精算課税を選択してしまうと、通常の暦年課税には戻せなくなります。暦年課税では毎年110万円の控除がありますが、一方、相続時精算課税を利用すると、その人からの贈与は合計2500万円しか控除がありません。長い期間にわたって贈与を受ける場合には、暦年課税の方が得になる場合もあるので注意が必要です。
② 小規模宅地棟の特例が利用できない
居住用の財産はあくまで住むためのものなので、相続税をかけるのは良くないという考えから、相続税の計算の時にその価値を大きく減額してもらえます。しかし、相続時精算課税を利用するとこの特例がなくなります。
③ 相続時に課税される
相続時精算課税は、贈与時には贈与税がかからなかったとしても、相続時に生前に引き継いだものも含めた財産全てに相続税をかけます。
贈与税の相続時精算課税に関しての詳細は、税理士さんにご相談又は国税庁HPをご確認ください。
不動産を贈与の対象とする場合は、登記が必要となりますので、当事務所へお問い合わせください。