遺言

No.233 公証人のお仕事 ~ 判決と同じ権限

    ~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~                                                    第233号 令和6年12月発行

    A COLUMN ~記事~

    公証人も普通のひと? ~ 公証人とドライブ

     

    先日、某公証人の先生と数十分間のドライブをしてきました。とは言っても、もちろんプライベートではありません。入院中の高齢者の方が公正証書遺言の作成の依頼を受け、病院への出張を希望されたため、公証役場から病院まで公証人を送迎したのです。司法書士の仕事をする上で、公証人の先生にお世話になることは多々あります。遺言はもちろん、会社の定款認証、任意後見契約等‥。(公証人のお仕事については下記「解説」をご覧ください) 普段公証役場で数分しかお目にかかることのない公証人と数十分お話しできる貴重な機会となりました。

    公証人の多くは30年以上の実務経験がある裁判官です。公募制度もありますが、当職が知る限り、裁判官や検事でも上級職を勤め上げた方でないとなれないそうです。要は「偉いひと」です。普段、当職でも公証人の前に立つと若干緊張するのですが、ドライブ中話をしてみると大変気さくな、普通の優しいおじいちゃんといった印象でした(もちろん、頭がすごく良いことは、話し始めて数分ですぐわかりましたが)。お仕事での送迎なので不謹慎かも知れませんが、数十分があっという間で大変楽しいドライブをさせていただきました。

    公証人の制度についてわかりやすく説明してくれ、仕事上の苦労話や体験談、世間話からプライベートのお話しまで。愛知県の公証人の多くは、ご自宅は関東にあり、愛知県まで単身赴任(ホテル暮らし)をされています。公証人は公務員ではなく、個人事業主なので、どこの公証役場に配属されるかで収入に差があるとか。実は定時で帰れることはなく、結構残業されているとか。単身赴任中の夜の過ごし方だとか。東京と愛知県の住宅事情の違いの話とか。普段聞けないお話がたくさんできました。

    総じて思ったのは、公証人も特別な方でなく、普通の感覚を持った「普通のひと」なんだということ。裁判官は職務上、プライベートで一般の方とあまり接触することができないなんて噂も耳にしたことがるのですが、羽目を外すことはないのかも知れませんが、実際には飲みにも行くし、遊びにも行くし。逆に大変頭の良い方なので、一般人の感覚をなくさないように、自分をコントロールできているのではとも感じました。

    それから、常に穏やかで感じがよかったのも、もともとの人柄なのかも知れませんが、自己コントロールのたまものなのかも知れません。

    当職も、仕事上は、常に穏やかに、一般的な感覚を忘れないことを心がけてていきたい、公証人を見習おうと感じたドライブでした。 プライベートでは羽目をはずしちゃうことはあるかもしれませんが‥。

     

     

     

     

    EXPLANATION ~解説~

    公証人のお仕事 ~ 判決と同じ権限

     

    コラムに続いて、本号では「公証人」を取り上げます。一般の方が普段会うことが少ないであろう公証人ですが、何をしてくれる人か知っていると、皆様のお役に立つこともあろうかと思います。

     

     

    1 公証人とは

    公証人とは、法律の専門家であって、当事者その他の関係人の嘱託により「公証」をする国家機関です。公証人は、裁判官、検察官、弁護士など長年法律関係の仕事をしていた人の中から法務大臣が任命します。
    公証人が執務する場所を「公証役場」と呼んでいます。

    公証人が作成する契約書等を「公正証書」と呼びます。わかりやすく言うと、公正証書は裁判所の判決と同じ効力がある書面と考えて差し支えないかと思います。

     

     

     

    2 公証人の仕事

     

    公証人は、当事者の嘱託(依頼)により、契約や遺言等の「公正証書」を作成したり、外国宛の文書等に「認証」を付すことなどを仕事としています。

     

    具体例

    ① 不動産の賃貸借契約、売買契約、金銭消費貸借(お金の貸借)契約等の契約について「公正証書」を作成

    高い証拠能力があるので、裁判になっても立証に苦労がいりません。また、債務者が約束通り金銭債務を支払わなかった場合には強制執行もやむを得ないとの内容の条項(強制執行認諾条項)を入れることにより、債務者が約束どおり支払いをしなかった場合には、裁判をしないでも、不動産・動産・給料などの財産を差し押さえて取り立て弁済にあてることができる強制執行の手続を速やかにとれる効力(執行力)が与えられています。

     

    ② 「公正証書遺言」を作成

    自筆の遺言の場合、遺言者の死後、家庭裁判所で「検認」という手続が必要になります。この「検認」の際に相続人間のトラブルになることが多々あるのですが、「公正証書遺言」は検認を経ることなく相続の手続(預金の解約や不動産の名義変更)が可能です。

     

    ③ 離婚に伴う「公正証書」の作成

    財産分与や慰謝料の支払、子供の養育費や教育費の支払などの離婚に伴う給付金の支払契約を「公正証書」によって作成することで、相手方が支払わなかった場合に裁判を経ることなく、預金や給与への強制執行が可能になります。

     

    ④ 任意後見契約

    お年寄りや判断力の点で日ごろの生活に不安を感じるようになった方には、任意後見契約を「公正証書」によって作成し、将来判断能力が不十分となったときに、自分の生活や療養看護、財産管理に関する事務を代理してやってくれる人(成年後見人)をあらかじめ決めておくことができます。

     

    ⑤ 会社の定款認証

    株式会社を新しく作るとき、定款をチェックして「認証」し、会社の設立が適法に行われるようにします。

     

    ⑥ 契約書等の認証

    個人や会社の作成した委任状や契約書等の文書について、その人が作成したことに間違いないことを「認証」し、その文書がその人の意思に基づいて作成されたことを証明します。

     

    ⑦ 確定日付の付与

    契約書や催告書など権利の得喪や変更に関する文書については、将来、作成日が争われたり、作成日付を遡らせた文書が作成され紛争になることがないようにするため、公証人がその文書に日付ある印章を押捺し、「確定日付」を付与します。

     

    その他、信託の契約や、権利証がない場合の本人確認情報の作成、裁判所に提出する証拠の宣誓認証等、公証人の業務は多岐にわたります。

     

     

     

    ご不明な点がございましたら、当事務所へお問い合わせください。

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