成年後見

No.253 成年後見制度の改正 ~ 使いやすい制度になるのか?

    ~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~                                                   第253号 令和8年8月発行

    A COLUMN ~記事~

    デジタル依存の功罪 ~ 数年ぶりの書面申請

     

    近年、いろいろな手続がデジタル化、オンライン化することによって世の中が非常に便利になりました。スマホ一つで振込も、買物の支払も、あらゆることができる時代です。もし、数日スマホが使えないとなったらどうなるでしょうか?単に、電話ができない、SNSができない、情報収集が困難という不便だけに留まらず、生活そのものに大変な支障をきたすでしょう。アスクル、アサヒビール、ニチレイといった大企業も、ランサムウェア攻撃により、オンラインシステムが使用できなくなり、大打撃を受けたというニュースも皆様の記憶に新しいことでしょう。

    実は先日、当事務所でも一時的にオンラインシステムが使用できなくなるトラブルが発生しました。登記申請がオンラインでできなくなってしまったのです。ランサムウェアの攻撃を受けたわけではありません。単に当職のミスにより電子申請書(オンライン申請の際に必要な電子署名)の更新手続を忘れてしまい、再申請が受理されるまでの約10日間、登記のオンライン申請ができなくなってしまったのです。

    登記申請はオンライン申請であれば、全国どこの法務局へも事務所のPCからワンクリックですることができます。登録免許税の納付も、PCからすることができます。オンライン申請後、実物でしか提出できない書面を法務局へ郵送することで手続は完了します。 そのオンライン申請ができないとなると、手続は昭和の時代に逆戻りします。申請書は紙でプリントアウトし、登録免許税は郵便局で収入印紙を買って貼り、申請自体も管轄法務局へ走って提出することになります。収入印紙は現金でしか買うことができません。たまたま大きい物件の登記申請があったため、数百万円の現金を用意しなければならず、それだけでも一苦労でした。岡崎、豊田、豊橋、刈谷、名東、本局(丸ノ内) の各法務局まで走って申請したなんて日も。さいわい、スタッフや当事務所OBの協力もあって、お客様に迷惑をかけることはありませんでしたが。

    その後なんとか復旧して、現在は通常営業ができていますが、デジタル・オンラインにいかに依存していたかを実感した10日間でした。デジタルに依存しているからこそ、それを使えなくなった時にどうするか、いかに対応するかといったことを普段から考えておく必要を感じました。

    正直、考えて対策しておいたとしても、二度と味わいたくない大変な10日間でしたが…す。

     

     

     

     

     

     

     

    EXPLANATION ~解説~

    成年後見制度の改正 ~ 使いやすい制度になるのか?

     

    本年6月に民法の一部を改正する法律が成立しました。

    この改正は、成年後見制度等ついての改正です。「成年後見制度」(認知症等により意思表示が困難な人に後見人をつけ代わりに法律行為を行ってもらう制度)が始まって四半世紀超、そもそも煩雑で使いづらかった上、時代にも合わなくなってきているために行われた改正だとは思うのですが、改正によって使いやすくなるのでしょうか?

    施行まで2年ほどあるため、具体的な詳細はまだわからない部分も多いですが、どのように変わるかの概要を解説します。

     

     

    1 現行の成年後見制度の問題点

     

    成年後見制度の4大課題は長期化・意思が反映されない・交代できない・費用負担と言われています。

    課題① 一度始めると終われない
    現行制度では、後見が始まると、本人の判断能力が回復しない限り制度が続きます。「もう必要なくなったのに終われない」という状況が生じやすく、当事者・家族の負担となっていました。

    課題②本人意思が反映されにくい
    後見では後見人がほぼすべての法律行為を代理できる一方、本人が直接決められることが大きく制限されます。本人の意向や生活歴とは合わない決定がなされるリスクが指摘されていました。

    課題③後見人を交代しにくい
    一度選ばれた後見人は、不正行為などの重大な理由がない限り交代が難しく、当事者・家族との関係が悪化しても継続せざるを得ない場合がありました。

    課題④費用の見通しが立てにくい
    後見人報酬は家庭裁判所が決定しますが、その水準や見込み額が事前に把握しにくく、利用を躊躇する要因となっていました。多くの場合、弁護士・司法書士等が成年後見人に選任されます。ボランティアではないので、当然報酬は必要でしょうが、本人が亡くなるまでずっと払い続けるとなると相当な費用負担になってしまいます。

     

     

    2 改正の主要ポイント

     

    ① 後見・保佐・補助の3類型を「補助」に一本化

    現行制度では本人の意思表示の可否の程度により後見・保佐・補助に分けられていますが、改正後は、対象を拡大した「補助」に統合される予定です。

    一本化後の新制度では、家庭裁判所が本人の状況を個別に審査し、「必要な行為だけ」を支援対象として定めますたとえば「不動産の売却のみ代理可」「銀行の定期預金解約のみ同意必要」という形で、本人の自律性を最大限尊重しながら必要最小限の支援を設計できます。

     

    ②終身制の廃止(必要な期間だけ利用できる)

    改正法の大きな変更点の一つが、終身制の廃止です。
    家庭裁判所が「もはや補助は必要ない」と認めた場合、補助開始審判を取り消して制度を終了できる(本人・家族から「必要がなくなった」として終了を申し立てることも可能)
    この改正により、「遺産分割のためだけに申し立てる」、「不動産売却のためだけに申し立てる」(終わったら終了)といった利用もできるようになることが想定されます。

    ③後見人交代の柔軟化

    現行制度では後見人の交代が難しく、不正行為などの重大な理由がなければ解任できませんでした。改正後は、家庭裁判所が「本人の利益のために特に必要」と認めた場合に補助人を解任・変更できる仕組みが新設される見込みです(当事者が任意に自由交代できるわけではなく、家庭裁判所の判断が前提です)。

     

    ④報酬の透明化

    後見人の報酬は家庭裁判所が決定しますが、現行制度では事前の見通しが立てにくいという問題がありました。改正後は、家庭裁判所が報酬を定める際に考慮する要素(補助の事務の内容等)を明文化し、報酬算定の透明化を図る改善が予定されています。

     

     

    ご不明な点がございましたら、当事務所へお問い合わせください

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