~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~
第161号 平成30年11月 発行
遺言 ~公正証書遺言のすすめ
A COLUMN ~記事~
ホスピタリティの塊 ~ 博多の女
先日、博多へ社員旅行に行ってきました。海の中道や太宰府天満宮を観光し、イカの活け作りや博多ラーメンといった博多グルメを満喫。男性陣は飲みに繰り出し、女性陣はさらに足を延ばして大分・熊本まで。大変楽しい社員旅行になりました。その旅行の際、大変お世話になったのが、博多に出店した取引先の本部長さん。宴会の会場・飲み屋の選定から予約まで、手配を買って出てくれました。夜は遅くまでつきあってくれた上、店舗の見学までさせていただき、彼のホスピタリティのおかげで、より充実した旅行とすることができました。本当に感謝しています。
「博多」と「ホスピタリティ」というと忘れられない人がいます。彼女は、十数年前、博多に旅行した際、たまたま知り合っただけの関係なのですが、「ホスピタリティの塊」と言っていいほどの接待をしてくれる女性でした。初対面の当職たちに、お店の案内から予約までしてくれた上、日付が変わるまで一緒に飲みにつきあってくれました。率先して宴会の場を盛り上げ、お酒もつくり、話し上手で聞き上手、飲みつぶれた先輩の介抱から、締めのラーメン屋の案内まで。本当に至れり尽くせりの接待でした。
「何かお礼をさせてよ」と言っても決して何も受け取らず、「どうしてここまでしてくれるの?」と尋ねると、「せっかく愛知から博多まで来てくれたんだから、楽しんで帰って欲しいから」とのこと。見習うべきホスピタリティでした。当職も、お客様に対し彼女のようなホスピタリティを持って接することができたらと、真剣に考えたものです。
今、当職はお客様にホスピタリティを持って接することができているでしょうか。懐かしい記憶を想い出すとともに、襟を正すきっかけとなった良い社員旅行となりました。
念のため言っておきますが、その博多の女性と当職とは深い関係にはなっておりません。グレーでもオフホワイトでもなく、真っ白です(笑)。
EXPLANATION ~解説~
遺言 ~ 公正証書遺言のすすめ
相続が発生した時、残された相続人である妻や子供たちの間で争いが起きることほど悲しいことはありません。相続人同士での争いを未然に防ぐための有効な手段の1つが「遺言書の作成」です。今号ではその「遺言書」について解説していきたいと思います。
1.遺言の種類
遺言の方式は、大きく分けて普通方式と特別方式の2種類あります。特別方式は死期が急に迫っている場合など特殊な状況下にある場合の例外的な方式であり、一般的に遺言を作成する場合は普通方式を用います。なお「特別方式」は「普通方式」の遺言ができるようになって6ヶ月生存した場合には自動的に効力が失われます。「特別方式」の遺言は、伝染病等の病気で隔離状態の場合や船の遭難の場合等、普通の生活の中で利用されることはまずありえないので説明は割愛します。
普通方式遺言には、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3つがありますが、秘密証書遺言が利用されることは、ほとんど稀です。それぞれのメリット・デメリットを考えた上でどの方式にするかを選択する必要があります。
費用をかけずにとりあえず遺言を残したいというのであれば「自筆証書遺言」が適当でしょう。しかし、遺言はそもそも「残された相続人間の争いを避ける」ために作成されることから考えると、「公正証書遺言」を利用すべきだと当職は考えます(理由は後記)。
2.各遺言の特徴(普通方式)
◎ 自筆証書遺言 遺言者本人だけで作成。最も簡単な遺言書。死後、家庭裁判所で「検認」が必要。
◎ 公正証書遺言 公証役場で公正証書として作成される遺言書。作成には2人以上の証人が必要。
◎ 秘密証書遺言 遺言者本人が本文を作成し、証人2人と一緒に公証役場へ行って封印を行う。
3.遺言は「公正証書遺言」ですべき!
(1)確実に遺言を作成することができる
公正証書遺言の最大のメリットは、作成者たる公証人が「法律の専門家」であるため、自筆証書遺言と異なり、内容的にも形式的にも不備が生じることがない点にあります。(自筆証書遺言の場合は、遺言書を作成して安心していたら実は形式不備で遺言としての効力を有しなかったり、相続人間の争いを避けるための遺言なのに内容的に問題があったため逆にトラブルになってしまうなんてことがあります。)
(2)紛失・変造のおそれがない
公正証書遺言はその原本が公証役場に保管されるため、紛失・変造のおそれがありません。また、公証人会連合会の検索システムにより、遺言者の死後、遺言の有無を公証役場で確認し、再度謄本を発行してもらうことも可能です。
(3)遺言者が死亡した後の手続が簡単(争いが生じる可能性も少ない)
自筆証書遺言の場合、遺言者の死後裁判所において「遺言の検認」手続が必要になります。その際、遺言の存在が全ての相続人に知られることとなり、トラブル(遺言無効の訴え等)の元となりかねませんが、公正証書遺言の場合はその検認手続を経る必要はありません。
(4)専門家の関与により、更に安心
公証役場で遺言書を作成する際、遺言者と公証人との面談時間には限りがあるため、趣旨の若干異なる遺言書ができあがってしまったり、遺言書に載せるべき財産に漏れが生じてしまうことが希にあります。公正証書遺言の作成を、司法書士等の専門家に関与させることで、遺言内容・相続財産の確認が確実にでき、かつ公証人との事前打ち合わせもなされるため、確実に趣旨沿った遺言書ができあがります。また、証人もその司法書士等に依頼してしまえば、証人探しの手間が省ける上に、守秘義務により遺言内容が他に漏れる心配もなくなります。
ご不明な点がございましたら当事務所へお問い合わせください。