~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~
第171号 令和元年9月 発行
署名証明(サイン証明) ~ 海外居住者の不動産取引
A COLUMN ~記事~
慣れの怖さ ~ エアコンを買い換えました
まだまだ残暑が厳しいですね…
この夏、事務所のエアコンを買い換えました。事務所を建てた時からだから11年、冷房の効きが悪くなってきていました。事務所スタッフの増員やパソコンの台数増加による事務室の室温上昇、さらに近年の猛暑もあいまって、ちょっと暑すぎるなということで、大型の最新型エアコンに付け替えることにしたのです。劣悪な環境下でスタッフに我慢を強いるわけにもいきません。
近年の日本の猛暑は異常ですね。今年も40度近い気温の日が何日かありましたが、当職は「昨年よりはましかな?」と感じていました。十数年前なら、35度を超えただけで異常な暑さだと思っていたような気がします。今年の暑さは異常なはずなのに、「昨年よりまし」と思うってことは、「慣れ」のせいなのでしょうか? 「慣れる」ってことは、良い面もあるのでしょうが、怖いことです。去年より暑くないからということで油断していたら、たちまち熱中症で倒れてしまいます。
当職も、この業界に入ってもうすぐ18年、開業してもう14年になります。月に何十件もの不動産売買に立ち会い、当たり前のように日々の業務を行っています。開業した当初は月に数件、司法書士になったばかりのころなんかは月に2、3件の立ち会いしか任せてもらっていませんでした。数千万円の不動産取引からくるプレッシャーから、緊張の連続で、汗が止まらず、説明も噛みまくり…、自分が不安だった分、お客様も不安だったろうなぁ…。
現在は、数々の経験を経て、自分で言うのもなんですが、「百戦錬磨」の司法書士になってきたと自負しています。トラブルにも冷静に対処でき、お客様に不安を与えることもなくなったと思います。
でも、たまに昔を思い出して気を引き締めるようにしています。不動産の売買、数千万円の取引です。「慣れ」てはいけません。常に緊張感を保って、日々の業務にあたりたいと心がけています。
EXPLANATION ~解説~
署名証明(サイン証明) ~ 海外居住者の不動産取引
転勤等で海外に居住されている方が、不動産を売買したり、相続の手続きをしたりという事例が、近年増加しています。不動産の売却や、相続の遺産分割の際には、「印鑑証明書」が必要となります。海外に住所がある方は印鑑登録ができないため、大使館、領事館で「署名証明(サイン証明)」を発行してもらわなければなりません。
以前は、住所を日本に残したまま海外赴任される方が多かったのですが、雇用する企業の税金対策なのか、近年は住所を海外に移す方が増えたことにより、この「署名証明(サイン証明)」の手続をとることが増えている要因のように思います。
1.「署名証明(サイン証明)」とは
署名証明(サイン証明)とは海外に在住されている方向けに外務省が発行する証明書のひとつです。海外の在外公館(大使館、領事館)にて発行されるもので、日本国内で発行される印鑑証明書の代わりとなる書類です。日本国内に住所がなく、日本国内で印鑑証明書を取得できない方はこのサイン証明(署名証明)を取得し、実印が必要となる書類にはサインを行うことで手続きをします。
なお、サイン証明という言葉のほうが一般的ですが、外務省では正式には「署名証明」と呼ばれています。
2.署名証明の取得方法
署名証明は在外公館に出向くことで取得することができます。サイン証明は在外公館にて領事の面前にてサインを行い、そのサインが確かに本人のものであると言う証明となります。手続には手数料が必要となり、一通あたり1700円程度で現地の通貨で支払います。
上記が一般的な手続きですが、詳細の手続は場所によって異なる可能性があるため、取得の際は現地の在外公館にお問い合せをお勧めします。
3.署名証明の様式
署名証明には二種類の様式があります。ひとつは署名を単独で証明する「単独タイプ」と、もうひとつは署名押印が必要な文書と綴り合わせる「綴り合せタイプ」です。
<単独タイプ>
単独タイプは日本の印鑑証明書のように1枚の用紙として独立した証明書となっており、その証明書に本人のサインと、確かに本人のサインであることの証明を現地の領事にてされたことが記載してあります。
<綴り合せタイプ>
綴り合せタイプが署名押印が必要な書類を在外公館に持参し、領事の面前でその書類へのサインを行います。領事はその書類へ本人がサインをしたことの証明書を発行し、当該書類に貼り付け、契印(割印)を押します。
※ 不動産登記には「綴り合わせタイプ」の署名証明が必要です。そのため、登記に必要な書類を事前に作成し(司法書士にして作成もらって)、署名をしていない状態で大使館、領事館へ持って行ってもらわなければなりません。
4.国内(公証役場)での署名証明
海外在住ではあるが一時的に帰国し、その間に手続きを行う場合、国内の公証役場にてサイン証明を取得することも可能です。公証役場でのサイン証明は原則として綴り合せタイプとなり、署名押印が必要な書類を持参しなければなりません。
公証役場にてサイン証明を取得する場合も手続き前に公証役場に問い合せをし、手数料の額や、出向く時間などの打ち合わせを行う必要があります。
なお、帰国をしていてもはやり海外での居住が主であり、日本での住民票を置く手続きが取れない方は公証役場でのサイン証明の取得が必要となります。
ご不明な点がございましたら当事務所へお問い合わせください。