~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~
第178号 令和2年4月 発行
自筆証書遺言保管制度 ~ ① 概要
A COLUMN ~記事~
桜 ~ 新型コロナウィルス
車の車窓に桜の花びらが舞い散る。今年もそんな季節になりました。ただ、今年の春はそんな浮かれた気分にはなりませんよね。新型コロナウイルスの大流行により、世界中が経験をしたことのない恐怖や我慢を重ねています。一番怖いのは大切な命が失われること。経営者の立場として次に怖いのは、仕事ができなくなることです。収入がなくなる、従業員に給料を払えなくなることももちろんですが、それよりも取引先やお客様にご迷惑をかけてしまうことが何よりも怖いと思うのが本心です。
新型コロナ感染で仕事が突然できなくなるということは、単に当事務所の経営だけの問題ではありません。感染して仕事ができなくなるのは当事務所だけでなく、濃厚接触していた取引先の社員さんたちも休まなければいけなくなるでしょう。今受けている仕事が突然ストップし、お客様にも取引先にも大変なご迷惑をかけてしまうことになります。信用も失い、仮にコロナが収束しても、元の状態に戻ることは難しいでしょう。
自分たちだけの問題ではない。そんなことは、当職が言わなくてもみんなわかってますよね。大変だとは思いますが、お互い最大限の注意を払って感染防止に気をつけていきましょう。そして、もっと大変な思いをされている医療従事者の皆さんに心からの敬意を払います。
そんな中でも、今年も桜は例年通りきれいに咲いています。屋台もなく酒宴もできませんが、きれいなものはきれいです。桜の美しさに、例年以上に気づけたことは、今年の春の数少ない「いいこと」なのかもしれません。
自筆証書遺言保管制度 ~ ① 概要
自筆で書いた遺言を法務局で保管してもらう制度「自筆証書遺言保管制度」が令和2年7月10日から始まります。どのような制度か、そもそも遺言にはどのような種類があるのか、本号ではその概要を説明します。(次号ではその手続について解説する予定です。
1.遺言の種類
遺言とは、自分が死んだときに財産をどのように分配するかについて自己の遺志を明らかにするものです。 遺言の方式には主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。
① 公正証書遺言
法律の専門家「公証人」により作成してもらう遺言です。証人2人の立ち会いのもと、厳格な方式で作成され、原本が公証役場で保管されるため、信頼性の高い作成方法と言えます。 また、遺言者の死後、「家庭裁判所における検認手続」※が不要であるため、争いが起こりにくいという特長があります。作成には財産価格に応じた手数料が必要となります。
※ 検認手続の際に、全相続人に遺言の存在が知らされるため争いが起こりやすい
② 自筆証書遺言
15歳以上で、ご自身で書くことができれば、いつでも作成可能です。当然、手数料もかかりません。ただし、法令上の要件を満たしていなかったり、内容に誤りがあると無効となってしまうため、作成に際しては注意が必要です
- 遺言書は遺言者本人が原本を保管する必要があります
- 遺言者の死後、家庭裁判所における検認手続が必要です
→ この2点が「自筆証書保管制度」の開始により変わります
2.自筆証書遺言保管制度の概要
自筆証書遺言を作成した本人が法務局(本局・支局)に遺言の保管を申請することができる制度です。
ご本人が法務局へ出向く必要があり、手数料も必要になります。
◎ 遺言者のメリット
① 紛失・亡失を防ぐことができる
→ 自身で保管すると、なくしたりするおそれがあり、死後遺言書が発見されない可能性もあります。
② 他人に遺言書を見られることがない
→ 自身で保管すると、他人に見つかった場合、勝手に開封されたり、破棄・改ざん・隠匿のおそれがあります。
◎ 相続人・受遺者のメリット
① 家庭裁判所の検認が不要
→ 速やかに相続手続ができ、他の相続人に連絡がいかないので不要な争いを避けることができます。
② 全国の法務局で下記の請求ができる
1. 「遺言書保管事実証明書」の交付請求
~ 遺言書が保管されているかどうか調べること
2. 「遺言書情報請求書」の交付請求
~ 遺言書の写しの交付を請求すること
3. 遺言書の閲覧請求
※ 閲覧は遺言の原本が保管されている法務局に限られます
次号では、自筆証書遺言の作成・保管請求の方法について解説します