~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~
第123号 平成27年9月 発行
未成年者の遺産分割 ~ 特別代理人の選任
A COLUMN ~記事~
北海道から九州鹿児島まで ~ 広がる「ながしまネットワーク」
当事務所は、毎年夏の終わりに「事務所OB会」を開催しています。今年は西尾の佐久島へ一泊旅行形式で行いました。毎年、当事務所から開業したほとんどの司法書士、行政書士が参加してくれます。今年は、現役スタッフを含めて総勢12名。昨年に引き続き、北海道苫小牧で開業した司法書士もわざわざ駆けつけてくれました。バーベキューをして、海で遊んで、夜は花火に宴会、天候にもなんとか恵まれ、本当に楽しいひとときを過ごすことができました。当事務所を卒業して開業した皆にも慕われて、本当に当職は所長冥利に尽きます。
当事務所は、スタッフの開業を支援する事務所です。将来的に開業を目指す意識の高いスタッフが、各方面から集まってきます。入所のきっかけは様々です。当職自ら声をかけた者もいれば、司法書士会の斡旋だったり、他の司法書士の紹介だったり、ホームページを見て直接「雇ってください」と言ってきた者がいたり…。当職は、彼らが近い将来の開業の糧になるような知識や経験を積めるよう、できる限りの支援を心がけています。その気持ちや配慮を知ってか、彼らの方も、自身のスキルアップのみを考えるのではなく、当職のために、当事務所のために骨身を惜しんでがんばってくれるのです。手前味噌ですが、非常に良い相乗効果が生まれていると思います。
ただ、スタッフが続々と開業していくということは、採用もし続けていかないと人材が不足することを意味します。みんなが、がんばってくれれば事務所全体の評価が上がり、仕事も増えます。先月、はるばる九州は鹿児島から新たに司法書士が入所してくれましたが、正直まだまだ人材が足りません。
ということで、「当事務所ではまだまだスタッフを募集しております」。本通信をご覧の司法書士有資格者の皆様、遠方の方でも心配はいりません。実際に、当事務所は北は北海道から、南は九州鹿児島まで遠方からの採用の実績があるのですから。ご応募お待ちしております
EXPLANATION ~解説~
未成年者の遺産分割 ~ 特別代理人の選任
先日、当職の友人が亡くなりました。非常に悲しいことですが、当職と同い年、42歳の若さで帰らぬ人となってしまいました。残された彼の奥様と幼いお子さんのことを考えると胸が痛みます。
人が亡くなると、当然のことながら相続が発生します。残された家族は、ただ悲しんでばかりいるわけにはいきません。通常、亡くなった方の財産を相続人同士がどのように分けるかを話し合う「遺産分割」が行われます。ただ、話し合いをすると言っても、相続人の一人が幼児だった場合、直接自分で話し合いに参加す
ることはできません。母親が代わりに…と言うのが通常でしょうが、母親自身も相続人である場合、母と子で利害関係が衝突することになり、問題が生じます。
こういったケースの場合に「特別代理人の選任」が必要となります。
① 「利益相反」と「特別代理人」
「利益相反」行為とは、未成年者とその法定代理人の間で利害関係が衝突する行為のことです。
本来、未成年の子が法律行為をする際には、親権者である親が「法定代理人」として代わりに行います。ただし、その親のいいなりに事が進められることで、子が不利益を受けることが考えられます。
そういった「利益相反」の場合に、親の代わりに子を代理して法律行為をするのが「特別代理人」です。
<事例> 夫が死亡して、妻とその子2人が相続人の場合。(子は2人とも未成年)
本来、未成年者であっても子どもたちは父親の財産の4分の1ずつの財産を相続する権利があります。母親が子どもたちが未成年であることをいいことに、夫の財産を全部取得することができるとなると、子の利益を害することになります。
こういった場合、子の利益を守るため、家庭裁判所に「特別代理人」を選任してもらわないと、遺産分割はできません。
(子1人につき、1名の特別代理人が必要です)
② 利益相反の事例(特別代理人の選任が必要な事例)
遺産分割協議に限らず、利益相反行為の具体例には以下のようなものがあります。
・親権者と子との間の不動産売買、債権譲渡。・親権者の債務のために子を連帯債務者としたり、保証人としたりする行為。
・親権者の債務のために子所有の不動産に抵当権を設定したり、代物弁済として売却したりする行為。
・親権者が第三者の債務につき、自己及び子を連帯保証人とし、その共有する不動産に抵当権を設定する行為。
・親権者が代表取締役をしている会社が負担する債務の担保として、子所有不動産に抵当権を設定する行為。
・子の有する債権を放棄し、親権者が子の債務者に負担している債務の免除を得る行為。・遺産分割。相続の放棄。寄与分を定める処分。
※ 親権者と子の間だけでなく、後見人と被後見人の間の利益相反の場合にも「特別代理人」選任が必要となります。
③ 特別代理人選任の手続
1.申立人
親権者、後見人、利害関係人
2.裁判所の管轄
子(被後見人)の住所地の家庭裁判所
3.費用
印紙代 800円 ・ 郵便切手代 数百円程度 ・ 司法書士・弁護士費用(依頼する場合)
4.必要書類
特別代理人選任申立書
申立人・親権者(後見人)・子(被後見人)の戸籍謄本
特別代理人候補者の戸籍謄本・住民票
利益相反行為関係書面 (将来作成される契約書、遺産分割協議書などの案等)