相続

No.176 相続人がいなかったら

    ~ 知らなくてもなんとかなるかもしれないけど、知ってたらきっと役立つ情報をお届けします ~

    第176号 令和2年2月 発行

    相続人がいなかったら ~ 遺産は誰のもの?

    A COLUMN ~記事~

    おら東京さいぐだ ~司法書士の出張

     
    先日、東京へ行ってきました。数年ぶりの東京ですが、観光ではありません。お仕事です。東京駅近くのホテルのレストランでお客様と待ち合わせをして、食事をしながら本人確認、登記の書類を整え、そのまま岡崎へ日帰りという強行日程でした。東京まで行って、行った先は東京駅のみ。滞在時間は約2時間。せっかく東京まで行ったんだから、少しは観光でもしてくればよかったのに…とも思うのですが、司

    法書士の出張はだいたいこんなもんです。
    司法書士が「出張」をするときは、だいたいお客様(多くの場合不動産の売主さん)が遠方に住んでいらっしゃって、不動産売買の契約や代金決済のために来ていただくことができない時がほとんどです。非常に高価な資産である不動産を手放すのですから、直接の面談して本人確認、売却意思の確認をさせていただかないことには売却の登記申請はできません。

    そのため、年に数回は遠方へ出張することになります。ただし、お客様に会って手続きに要する時間は30分から1時間程度。そんなに時間はかかりません。結果、どれだけ遠方でも、ほとんどの場合日帰りできてしまうのです。

    関東、関西ですめばいいのですが、過去には当事務所の司法書士が九州や東北地方まで日帰り出張したこともあります。変わったところでは、売主さんが刑務所に入っていて、面会をするために松山刑務所日帰り出張なんてことも…

    友人やお客様が、「来週から1週間東京だよ…」とぼやいているのが、ちょっとうらやましかったりもする司法書士です。

    EXPLANATION ~解説~

    相続人がいなかったら ~ 遺産は誰のもの?

    何らかの財産を持っている人が亡くなれば、「相続」が発生します。通常、亡くなった方の財産(遺産)は、その配偶者だったり、お子さんが相続により取得することになります。お子さんがいなければ、お父さんお母さん。お父さんお母さんが亡くなっていれば兄弟姉妹が相続人となります。

    では、もし妻も子も親兄弟もいない方が亡くなった場合はどうなるのでしょうか?

    「遠い親戚が相続人となる」とお考えの方もいるかもしれませんが、相続人の範囲は、配偶者、子や孫、父母や祖父母、兄弟姉妹やその子までと民法で定められており、遺言で指定しない限りそれ以外の親戚に遺産を残すことはできません。

    相続人がおらず、遺言書も作っていない場合、遺産は誰のものになるのでしょうか?

    1.特別縁故者

     相続人がいない場合、亡くなった方と「生計を同じくしていた人」や「療養看護に努めた人」等、亡くなったかたに縁の深い方に財産が分与されます。

    この縁の深い方のことを「特別縁故者」と呼びます。

    ただし、縁の深い方が皆「特別縁故者」となれるわけではありません。一定の期間内に家庭裁判所に対して申し立て、裁判所が縁故の度合いや献身の度合い、生活状況などを調査したのち認められます。しかし裁判所の判断によりますので必ず認められるとは限りませんし、一部しか認められない場合もあります。

     【特別縁故者の要件】

    ① 相続人がいないこと

    ② 特別縁故者から家庭裁判所へ請求の申立をすること

    ③ 家庭裁判所が「特別縁故者」と認めたこと

    2.相続財産管理人

    では、特別縁故者がいることを裁判所が認めるまでの間、亡くなった方の財産は誰が管理するのでしょうか?

    相続財産の管理は、利害関係人の請求により家庭裁判所により選任された「相続財産管理人」がすることになります。

    相続財産管理人となるのに特に資格が必要ということはありませんが、亡くなった方との関係や利害関係の有無などを考慮して、相続財産を管理するのに最も適任と認められる人が選ばれます。弁護士、司法書士等の専門職が選ばれることもあります。

     【相続財産管理人の職務】

    ① 相続財産の管理・精算手続き(債権者や遺言で財産を譲り受ける方がいないかを公告し、いれば精算をする)

    ② 相続人の捜索(相続人と名乗る者がいないかを公告する)

    ③ 特別縁故者への精算(裁判所にみとめられた特別縁故者に財産を分与する)

    3.国庫への帰属

    もし、相続人も特別縁故者もいないとなった場合、また特別縁故者に財産を分与してなお残余財産がある場合、その財産は 「国庫」へ帰属します(国のものになってしまう)。
    ※ ただし、その財産が他の者との共有財産の持分であるときには、その持分は他の共有者に帰属します。

     

    ご不明な点がございましたら、当事務所へお問い合わせください

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