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第136号 平成28年10月 発行
「株主リストが必要」 ~ 商業登記の添付書類が変わります
A COLUMN ~記事~
人生を賭けた大勝負 ~ 司法書士試験
今年も、司法書士試験の合格発表の時期になりました。司法書士試験は毎年7月初め筆記試験が行われ、9月末に筆記試験の合格発表、その後口述試験を経て、11月初めに最終合格者が発表されます。年に一度しかチャンスはなく、合格率3%を切る狭き門です。片手間の勉強で合格できるような試験ではありません。受験勉強にほぼ専念できるような環境で、合格までの平均受験回数は4~5回と言われています。10年以上試験を受け続けている人も中にはいます。多くの受験生は、人生を賭けて司法書士試験という大勝負に挑むのです。
当職も15年前、司法書士試験に合格しました。受験回数は3回。受験勉強の期間は3年半でした。25歳の時、サラリーマンに挫折した後、自営で仕事をしたいと考えました。しかし、商売のノウハウもスキルもない自分が、自営業で成功する可能性は決して高くはありません。そこで「資格」を取ろうと考えたのです。資格に関する書籍を購入してきて、「独立開業」の欄が「5つ星」だった司法書士になろうと安易に考え、勉強を始めてみてすぐ後悔。
「なんて大変な試験に足を踏み入れてしまったんだろう…」って。それでも、一度なると決めたからには、絶対に諦めたくないと努力を重ね、なんとか試験に合格できたのです。
でも、実は合格した後も決して楽な道が待っているわけではありません。合格後、司法書士事務所に就職してスキルとノウハウを身につけ、独立開業して仕事を軌道に乗せることができて、初めて司法書士として「成功した」と言えます。多少の偏見はあるのかもしれませんが、近年の司法書士試験合格者には、そこを履き違えている人が多いようにも感じています。試験合格をゴールと考え、合格後に努力を怠ってしまうのです。実際に、当事務所でも、就職してすぐ辞めてしまった合格者もいます。
先月に当事務所に就職した新人は、今年の筆記試験に無事合格しました。筆記試験に受かって口述試験で落ちる人はほぼいないので、彼も数ヶ月後には司法書士としての第一歩を踏み出すことになるでしょう。でも、これからが正念場です。司法書士になれたことに満足して、努力を怠っていては大成することはできません。
がんばれよ!期待しているからね。
EXPLANATION ~解説~
「株主リストが必要」 ~ 商業登記の添付書類が変わります
株式会社(有限会社も含む)の登記申請の際の添付書類に関して、商業登記法規則の改正がなされました。具体的には、平成28年10月1日より、株主総会議事録に併せて「株主リスト」の添付が義務づけられます。株主総会議事録を添付する登記申請は、商業登記申請の中でも多数あるため、規則の改正により実務に大きな影響がでてきます。そこで、本号では、今回の改正について解説します。
① 改正の概要
商業登記規則に「株主総会決議を要する場合は『株主リスト』を添付しなければならない」旨の規定が新設されました。これは登記すべき事項が株主総会の決議を要する場合に、別途「株主リスト」を提供することによって、虚偽の登記申請がなされることを防止し、商業登記の真実性の担保を図るものです。
② 「株主リスト」とは?
株主リストとは、株主名簿に類似したものでありますが、会社法が規定する株主名簿とは記載事項が異なることから、法務省では「株主リスト」と称して区別しています。
○株主リストの記載事項(商業登記規則第61条第3項)
原則、有する議決権が上位10名の株主について
・氏名又は名称及び住所 ・保有する株式の数 ・議決権の数 ・議決権の割合
(比較)株主名簿の記載事項(会社法第121条)
すべての株主について
・氏名又は名称及び住所 ・保有する株式の数 ・取得日 ・株券番号(株券を発行している会社の場合)
③ 株主リスト作成の注意点
議案ごとに作成する必要があります
議案によって議決権を行使できる株主が異なる場合には、議案ごとに株主リストを作成する必要があります。どの議案も議決権を行使することができる株主が同じ場合は、株主リストは1通作成すればよいですが、その場合でも「第1号議案ないし第3号議案」というようにどの議案を対象とした株主リストなのかを記載しておかなければなりません。
登記に関係しない議案の株主リストは必要ありません
議事録の中に剰余金処分の件や、取締役退職慰労金支給の件といった、登記には関係の無い議案がある場合でも、これらについて株主リストを作成する必要はありません。
出欠や議決権の行使の有無は関係ありません
株主リストはあくまで決議時点での上位10名または3分の2の株主を記載するものであり、欠席した株主や議決権を行使しなかった株主がいた場合でもそのまま記載する必要があります。
株主総会決議を省略する場合や総株主の同意が必要な場合でも必要です
いわゆる書面決議(会社法第319条)により株主総会決議を省略した場合や、株主全員の同意が必要な事項の場合も、別途株主リストを作成する必要があります。
種類株主総会の株主リストも必要です
登記事項につき種類株主総会の決議や、種類株主全員の同意が必要な場合は、種類株主の株主リストを作成する必要があります。
有限会社も必要です
有限会社は会社法上は特例有限会社として株式会社と同様に取り扱われております。したがいまして、有限会社の役員変更や、目的変更などといった場合においても、株主総会議事録と共に株主リストを作成する必要があります。
「株主リスト」の書式、詳細は「法務省ホームページ」をご覧くださいhttp://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00095.html